「景王,陽子の憂鬱」

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「・・今日も・・一日が終わるのか・・・」
 慶国国王,陽子は憂鬱そうに大きな溜息をつく。
 感慨深げな一言に,景麒【けいき】はふっと優しげな笑顔を浮かべた。
「主上におかれましては,さぞお疲れのことでございましょう。鈴と祥瓊【しょうけい】が,寝所
を整えてございます。お早く,お休みになられませ」
 しかし,いたわりとねぎらいの言葉も,陽子にはただ恨めしいばかりだ。
「余計なことを・・・」
「は・・?」
「いや・・何でもない」
 景麒は,何も知らないのだ。
 怒ってみても何にもならないことを悟って,陽子は,恨めしげな視線を景麒から転じた。
 金波宮,正寝32の一つ。
 そこには,寝所と呼ぶには,あまりにも豪華で大きな建物がそびえている。
 待ち構えているであろう,二人の様子を思い,陽子はブルッと身震いをした。

 金波宮に,夜が更けた。
 いつ終わるとも知れぬ,長い夜が。



 赤楽三年。
 国内の乱を機に,国家としての立て直しを本格的に始めた陽子には,少しの息をつく暇もない。
 しなければならないことはたくさんある。
 それも早急に,だ。
 道路の整備,治安の回復,河岸や田畑の治水,水道,教育,国防・・・
「国防か・・・確かに,これも軽く見るわけにはいかないな・・」
 目の前に,山と積まれた奏上書に目を通しながら,陽子は呟く。
 陽子の登極で激減したとはいえ,妖魔に対する備えも怠ることはできない。
 そして,その根幹となる部分に,しっかりとした法を据えなければならないことも分かっている。
 でなければ,先の和州の二の舞だ。
「どれから手を付けていくべきものか・・・・やはり,法からか・・いや・・」
 慶国の民の生活はひっ迫している。
 言ってみれば,すべてが最優先事項なのだった。


 雁【えん】の国王,尚隆【しょうりゅう】は笑って言ったものだった。
「俺は,五百年かかってこの国を立て直した。急ぐな。お前も,五百年かけるつもりでやればいい。
のんびりとな」
「はい・・・」
 延王は,何かと自分を気遣ってくれる。
 率直に言って嬉しい。
 しかし,陽子は,やはり再び考え込んでしまう。
 五百年間国家を支え,荒廃した国を豊かな国に変えた男の言葉は,何にもまして重い。
 それは,軽そうな見かけだけの言葉では決してないのだ。
 そんな陽子の表情を見て取り,延王は怪訝そうな顔で覗き込む。
「・・ん? 俺,何か変なことを言ったか?」
「いえ・・ただ,延王の言葉は・・・何も知らない私には,深すぎるんです」
 ぷっという失笑が,向こうで控えていた延麒【えんき】の口から漏れた。
 次いで,奔放な笑いが陽子を包み込む。
「陽子,そりゃあ,尚隆を良く言い過ぎだ。そんなこと言うヤツぁ,雁国には一人もいねぇ」
「こらこら,六太,よく聞いておけ。人が見ぬところを,曇りのない目できちんと正しく見る。
これが国王の度量というものだ。陽子は,いい王になる」
 しかし,そう言いながら,延王も笑いを堪えきれないでいるのは,どういうことだ。
「わ,私はっ・・本当にっ」
「い,いや,陽子・・・頼む。もう喋るな・・」
 生真面目な表情を崩さない陽子に,よじれる腹を押さえた延王が手を振る。
 陽子は,顔だけでなく全身を真っ赤にして立ちつくした。


「ふぅ・・・」
 机上の書類から目を逸らし,窓の外を見上げる。
 紺碧の暖かな空が,果てもなく広がっている。
 陽子は,延王の言葉を考えていた。
「長い目でやれ・・・か」
 王になったことで神籍に入り,寿命というものがなくなった自分や,仙籍に入った官吏はいい。
 しかし,民はそうではない。
 その数十年の人生の中で,良いことがまるでなかったでは,国王が代わった意味など無いではな
いか。
・・私には・・すべての民を幸せにする義務がある・・・
 そこから自分が離れられない以上,するべきことは自ずと決まってくるような気がする。
「ふ・・・私は,どうもこれが性分らしい・・・」
 今日も,いっこうに減っていかない机上の書類を見て,陽子は軽く笑った。
 再び筆を執り,印を押す。
 陽子の政務は,夜更けまで続いた。

 来る日も来る日も,陽子は,文句一つ言うことなく政務に励んでいる。
「主上・・・」
 扉を開けたところで目の当たりにする,相も変わらぬ陽子の姿に,景麒は一つ溜息をついた。
 それは,確かに,景麒が求めていた国王の一つの姿ではある。
 陽子以前の国王では,決して叶わなかった願い。
・・しかし・・私は,こうなることを望んでいたのではない・・・
 次第に精彩を欠き,本来の闊達さを失っていくような陽子の様子に,景麒は胸を痛めていた。

「主上・・・」
 二度呼ばれて,初めて景麒に気づいた陽子は,顔を上げにっこりと微笑んだ。
「景麒か・・ごめん。気づかなかった。頼んでいた和州の様子はどうなっている?」
「主上・・・国家の計とは,国王一人が背負うものではありません。官も多数いるのです。政務に
お励みなさるにしても,もう少し,休みを取られては・・」
 景麒は,陽子の問いかけには直接には答えず,傍らに歩み寄る。
「このような奏上書ばかりに明け暮れては,主上のお体に障ります」
「ふ・・景麒,ありがとう。しかし,私には,休んだからといって他にすることもない。これしか
ないんだ」
「主上,それであれば−」
 景麒は咳き込むように,陽子に提案を始めた。

「諸国の政の様子を見て回られるのも,国王として重要なことかと。慶にはまだ,たくさんのこと
が必要です。諸国の知恵を学びに出られるのは・・」
「景麒も知っているだろう。それは,もう他の者にさせている・・」
「それであれば,州の視察に出られては如何でしょう。今までの成果を,ご自分の目で確かめられ
るのもよいかと思います」
「しかし・・・今やらなければならないことが・・」
「主上・・畏れながら申し上げます。もう少し,官を信じてお任せなされませ。官を育てていかれ
るのも主上の為すべきことかと・・」

 口を挟ませまいとするかのような,矢継ぎ早の景麒の言葉が続く。
 陽子は,呆気にとられた目で景麒を見つめた。
 陽子が知りうる限り,景麒はこのような話し方をするような者ではない。
・・景麒・・・心配をかけているのだな・・・そんな似合わない喋りをして・・・
 くっくっと,喉から笑いが込み上げてくる。
「主上・・?」
 怪訝な顔を向けた景麒に,陽子は笑って言った。
「いや,悪い。お喋りな景麒は,珍しいと思ってな。初めて見る」
「主上っ!!」
 久々の景麒の雷に,陽子は嬉しそうに笑う。
「分かった,分かった。すまなかった。では,少し休むとしよう。散歩でもしようか。それでいい
だろう? だから・・」
「そう難しい顔をしないでくれ,景麒。お前にそんな顔をされると,私まで苦しくなる」
 ふふっと,陽子は軽やかに笑って立ち上がった。
 しかし,景麒は,陽子の様子の中に別のものを見ていた。
 精一杯,明るく見せてはいるが色濃い疲労の色。
・・主上・・・
 景麒は頭を下げた。

「主上は,かなり無理を重ねられている様子です。いったい,如何すればよいものか・・」
 沈痛な景麒の訴えにより緊急に開かれた朝議は,国王に隠れる形で,馬鹿馬鹿しくも大真面目に
開かれていた。
「それは,主上に仕事をさせずに休んでいただこう,ということだな?」
「うむ・・・簡単なようでいて・・これは,なかなか・・・」
 国王に何かあっては国家の一大事・・・というだけではなく,臣下として敬愛する景王陽子の様子
は,諸官にとっても心を痛める懸案事項だったのだ。
「主上は生真面目すぎる方でおられる・・・休めといわれて休まれるようなお方ではなし・・」
「延王のように,遊び好きでいい加減なお方であっても困るのだが・・・慶は麒麟も国王も二人そ
ろって似たもの同士でいらっしゃるからなぁ・・」
「無い物ねだりを言っても始まるまい。第一,そうであるからこそ,我らはついていくと決めたの
だ。何か良い方策を考えよう」
 居並んだ,そうそうたる面々は,一様に腕組みをして気難しそうに眉根を寄せる。

 真っ先に声を上げたのは,先の乱で名を馳せた虎嘯【こしょう】だった。
「そんなもん,簡単じゃねぇのか。どーんと睡眠薬でも食事に盛れば−」
 瞬間,朝議の場が,絶対温度にまで凍り付くのを虎嘯は感じた。
・・や・・やべぇ・・・
 次の瞬間には,一気に沸騰する。
 いきなり椅子から立ち上がった官が,顔を真っ赤にして怒鳴り上げる。
「虎嘯っ!! お前は,主上に一服盛れと言うか! そんなことは断じてできん!」
「別に毒を盛れと言っているわけじゃ−」
「馬鹿者! 同じことだ!」
「目をお覚ましになられて,騙されたと知ったときが修羅場だぞ!」
「却下だ,却下!」
 他官からも一斉に叱責を受け,虎嘯は大きな肩を小さくすぼめた。

「主上は・・国王といえど,まだ若い女性であります。歳にして20にもおなりにならない・・
そこに何か答えがあるような気がするのですが」
 冢宰,浩瀚【こうかん】の静かな声に,周囲におぉというさざ波が走る。
「なるほど。流石は冢宰であらせられる浩瀚殿。それは気がつかなかった」
「考えてみれば当たり前のことなのに,ですな」
「いや,まったく。普段から難しく考える癖がついていたようで・・頭を柔らかくして考えろとは
このことでしたな」
 一気に和やかに緩んだ朝議の雰囲気に,景麒は期待を込めて尋ねる。
「それで,何か良い方策はおありか?」
「え・・?」
「それで・・?」
「い,いえ,私はもとが武官ゆえ・・・そうだ。卿はいかがか?」
 いきなり振られた官は,慌てて手を振る。
「い,いやっ,私も・・・敵が相手ならともかく,女性のことは何とも・・」
 再び朝議は凍り付いた。

 無力な時間が過ぎる。
「女性ということを考えて,花で部屋の中をいっぱいにしては・・・」
「何も,気分だけの問題ではない。我らは,主上のお体が心配なのだ。お休みになってもらわねば
困るのだ」

「それでは,薬湯でお元気になっていただいては・・・」
「卿は主上を薬漬けにする気か! それで,もっと働かれては元も子もないではないか!」
「い,いかにも・・・」

「主上のいた蓬莱では,女性は『ぐるめ』とかいうものに夢中だったとか。よいお食事を出して,
気分もお体もよくなって−」
「料理長を愚弄するのは如何なものか。普段から,主上には国王として恥ずかしくないものをと
命じてある。それに,あまり贅を凝らしては,主上はかえってお取りにならないだろう・・」
「確かに・・・」
 政策や乱の鎮定に当たっては,いかんなく力を発揮する彼等であったが,武官が大半を占めると
あっては『女性』というものに対して,なかなかに良い案は出てこないのだった。

 再び虎嘯が口を開く。
「あの・・俺,子供もいいなと思うんですが・・」
「ん? 子供とは?」
「俺んところに桂桂っていうガキが身を寄せているんですがね,子供の相手をしていると,心が和
むというか・・・世話をしているうちにあっという間に時間が過ぎて・・」
 そのとき,有無を言わせぬピシャリとした声が響いた。
「主上は・・・子守ではない」
 景麒だった。
 あまりにも,無為無策な論議が延々と続くことに,苛立ちを極限にまで上り詰めさせていたのだ
ろう。
 はっとした諸官の視線の中,景麒は押し殺した怒りで手を震わせていた。
 その目は,普段,仁道を旨とする麒麟のものであるにもかかわらず,睨む白眼には無上の恐ろし
さが漂っている。
・・やべぇ・・生真面目な台輔だからな・・・ついに業を煮やしたか・・・
 何とか取りなしをと期待して周囲を見るものの,誰もがさっと目を外し,不運な虎嘯と決して視
線を合わさない。
 爆発した景麒の怒りにあてられまいと,小さく俯いている。
「主上にお疲れをとっていただこうとしているときに,余計に疲れさせてしまうようなことになっ
ては何とするおつもりか。あまつさえ,主上は慶国の国王。その国王に,子守をせよと卿らは言え
るのか! それを告げられたときの主上の心痛はいかばかりか・・・察するに余りあると卿らは思
われぬのか」
 景麒の怒りは,簡単に他官にまで飛び火しそうな勢いだった。
 隣の席の官が俯いたまま『お前のせいだぞ。早く謝れ』とばかりに虎嘯の横腹を突つく。
「す,すまねぇ・・・」
 流石の虎嘯も黙るしかなかった。

 朝議は,次第にピリピリとしたものに変わっていく。
 重苦しい沈黙を破って,声を上げたのは禁軍の左軍将軍,青辛【せいしん】だった。
「そう言えば,蓬莱では,精神を爽やかにし体を健康に保つために『すぽぅつ』というものがあっ
たとか」
 青辛の言葉に,ほっとしたような浩瀚が興味深そうな顔をする。
「ふむ,なるほど。で,卿が知っている『すぽぅつ』とは?」
「は。・・・『まらそん』というものであれば」
「で,その『まらそん』とは?」
 精悍な顔に,キリッと流れる眉を上げて青辛は力強く答えた。
「は。それは・・・・走るのでございます」
 しばし,議場に沈黙が流れる。
 瞬間的に,脳裏も白く思考停止に陥った諸官の中で,虚を突かれながらも,浩瀚は何とか言葉を
続けた。
「そ,それは・・・何を楽しみにために・・どんなことを目的として走るのだろうか?」
 少し考える目をして,青辛はやはり力強く答える。
「やせるためだそうです」
「・・・・・・却下」
 疲れ切ったような空気が,朝議を支配した。

 朝議は煮詰まった。
 抜け出せない重苦しい空気が,諸官を包み込む。
 誰も彼も,腕組みをしたまま押し黙っていた。
 国家の礎を創ることにかけては,それぞれ右に出る者がないその分野の重鎮たちは,まだ20歳
にもならない娘のような新王の前に,まったく馬鹿馬鹿しいほど無力だった。

 そのときだった。
「ほほほほっ・・・遅れてすまんの」
「太師っ」
 三公の長であり,もとは松塾の閭胥【ちょうろう】であった遠甫【えんほ】の登場に,諸官たち
は一斉に期待の視線を向けた。
 いや,期待などという生ぬるいものではない。
 彼等は,文官ではなくあくまで武官だった。
 敵に対する作戦ならばともかく,およそ畑違いとも言える論議の場から,一刻も早く解放されたい
という切実な思いは,今や一心に遠甫【えんほ】に注がれている。
「もはや,我らでは埒があきませぬ。太師のお考えを,何とぞ我らに授けて頂きたい」
「指示して頂ければ,我ら,手足となって尽力いたす所存にて」
 必死だった。
 分からないと言われても,何か答えをもらうまでとことん食い下がる気で彼等はいた。
 しかし,事の説明を受けた遠甫は,縋るような視線を見渡して,にこにこと事も無げに言った。
「そう言えば,陽子には歳の近い祥瓊【しょうけい】と鈴【すず】という女史がおったの。女性の
ことは,女性に任せるが一番ではないかの」
 一瞬の空白。
 そして,次いで響き渡るおぉうという歓喜のどよめきが,議場に充ち満ちる。
「太師っ・・・何たるご賢察っ」
「是非もない! すぐに手配をっ!」
 解決できたことが嬉しいのか,この場から解放されるのが嬉しいのか分からないような喜びよう
だが,歓喜と興奮の渦中にある彼等は誰もその奇妙さに気づかない。
 結局のところ人任せにしたまま,朝議は一気に終幕を迎えた。

 諸国を回っている祥瓊と鈴に向け,最速といわれる騎獣が用意される。
 解決は,もう時間の問題だけであるはずだった。




 数日後の夜半。
「うぅ・・・んっ・・」
 陽子は,いつになく寝苦しいものを感じて,まどろみの中からうっすらと目を開けた。
・・ん・・何だ・・・
 奇妙な感覚。
 決して不快ではないが,体の芯を熱くするような何か−
「はっ!」
 陽子は,はっきりと目を覚ました。
 何者かが,自分の体を押さえつけ,覆い被さっている。
・・敵か!?・・いや,まさかっ!・・・
「何者っ」
 体を翻して起き上がりざま,陽子は剣を探した。
 しかし,そこにあるはずの剣は見当たらない。
「ふふ・・剣なんて,そんなものは必要ありませんわよ」
「!!」
 近づいてきた人影を認めて,陽子は息を呑んだ。
「もう目をお覚ましになられたんですか? 官が言っていた通りですわね。少し疲れをとらないと。
今夜は,あたしたちが景王様をお慰め差し上げますわね」
 白いシーツに華奢な体つきの女。
 鈴だった。

「す,鈴・・・なぜ・・」
 呆然と次の言葉が続けられない陽子の背後を,別の何者かが抱き締めてくる。
「私もいるのよ。陽子・・」
「祥瓊っ」
 振り返った陽子の首筋を,温かな舌が舐め上げた。
「あうぅっ・・」
 異常なほどの肌の敏感さに,陽子は声を上げた。
 瞬間的に飛び退こうとして,陽子は力無くクラクラと座り込んだ。
 その体を労り支えるようにして,前後からの手が陽子を抱く。
「あらあら,無理をしてはいけませんわ,景王様。今夜はじっとして,すべてあたしたちにお任せ
くださればいいんですから」
「動こうとしても無駄よ,陽子。ふふふ・・・だってねぇ」
 濃厚な,妖しい香の匂い。
 その匂いを吸い込むだけで,体の芯が熱く,そして力を奪っていくような気がする。
「まさか・・・」
「あら,もう気づいたの? そう,この香は媚薬なの。旅の途中で見つけたのよ。今夜は楽しませ
て上げるわ。ふふ・・明日になったら最高の気分になっているわよ・・・・鈴」
「はい・・・景王様,今夜は楽しみましょうね」
「や,やめろ・・・」
 陽子の制止にかまわず,夜着をするっと脱ぎ捨て,全裸になった鈴が迫ってくる。
 にっこりと笑った唇からは,既に熱い吐息が漏れ出ているようだった。

「はぁ・・ぁっ・・」
 正面から迫ってきた鈴に,胸の先端に吸い付かれて,陽子は震えるような声を漏らした。
 前からは鈴が,後ろからは祥瓊が,一糸纏わぬ姿で陽子の体に絡みついている。
「可愛いわよ・・・陽子」
 背中を祥瓊に抱かれて,唇を吸われている陽子は,抵抗の力も奪われ二人の為すがままだった。
 襟元はぐっと左右に大きくはだけられ,形の良い丸い乳房は露わにされている。
 その胸の膨らみは,今や,前後からの二人のしなやかな手に自由に嬲られていた。
「はぁ・・・景王様の胸。素敵・・・ずっと,この手にしたかったの・・」
「戦闘に明け暮れていたのに,意外と柔らかいじゃない・・・形も素晴らしいわ・・やはり女の子
なのね・・綺麗よ・・」
「や・・やめろ・・・触るな・・」
 伸びてきた四本の手が,丸く円を描くように何度も撫で回し,柔らかく揉む。
 そして,その先端の突起には鈴が小さな唇で吸い付いている。
 次第に下に滑り降りていく手が,夜着を割り,陽子の素肌を夜の空気に晒していく。
「う・・ぅぅっ・・はぁ・・ぁっ・・」
「ふふ・・景王様」
 鈴の赤い舌が硬く小さな尖りを転がし,陽子は顎を仰け反らせて喘いだ。

 鈴の舌先が乳首を刺激する度に,陽子の体には甘い疼きが響いてくる。
「やめろ・・いやだ・・」
 流されまいと拒絶の言葉をする唇には,唇を重ねた祥瓊の舌先が潜り込んでくる。
「あら,どうして? 女の子の最高に気持ちイイことをして上げているのに? まだ,足りなかっ
たかしら。それじゃあ,もっと熱を込めて可愛がって上げるわ」
「うぅんっ! んんうぅっ・・いや・・いやだ・・んあうぅっ・・」
「駄目よ・・・逃げられないわよ。さぁ,諦めて舌を差し出しなさい・・」
 必死に拒絶する声にかまわず,口の中を軟らかな舌が激しく動き回り,ついには陽子の舌を絡め
取る。
 ずるずると妖しい音を立てて,舌を根元まで唇全体で吸い上げられると,陽子は徐々に手足から
も力が抜けていってしまうのを感じていた。
 甘い痺れが広がってしまった手足には,思ったように力が入らない。
・・体が痺れて・・・自分のものでないみたいに・・・
「んっ・・うぅん・・んっ・・はぁ・・はぁ・・あくぅ・・んっ・・」
 女のツボを心得た絶妙な口づけに,媚薬で狂わされた体は,急激に火照り始めていく。
「舌も感じるでしょ・・これをされると,女の子は体の力が抜けてしまうのよ・・ふふ」
 祥瓊の指が,桜色の乳首を摘む。
「はぁ・・っ・・」
 左右両方の乳首を責められ,陽子は我知らず息を漏らした。

「いやだ・・はぁ,はぁっ・・・こんなこと・・んぅ・・っ・・やめてくれ・・」
 胸の突起を執拗に吸われ続け,陽子は力無く抵抗しようとする。
「そんなこと,まだ言っているの? 体はこんなに正直なのに・・」
「はうぅっ! くく・・祥瓊っ・・ぅぅんっ!」
 背中を祥瓊の指がさわさわと撫で回し,舌先が背筋に沿ってつつーっと舐め上げてくる。
 座らされた鈴の膝の上で,半裸の陽子の上体がぴーんと反り返った。
「ふふ・・・陽子ったら,可愛いわ。背中が凄く感じるのね・・・」
 陽子自身も知らなかった女の体,女の官能が次々と探られ,引き出されていく。
・・ど,どうして・・そんなところが・・・
 感じると分かれば,執拗な愛撫を加えてくる二人に,陽子は翻弄されていた。
「ね? 景王様,ココを吸われるとイイ気持ちになるでしょ? あたしたちが景王様を気持ちよく
して差し上げますから,じっとしていてくださいね」
「やめてくれ・・いやだ・・・こんなこと・・・」
 うわごとのように繰り返す陽子の左右の乳首に,鈴はちゅっちゅっと交互に口づける。
 上体が前から後ろから責め立てられ,陽子の裸身は,悩ましくくねりよじれた。

「ココ,こんなに硬くして・・・気持ちいいんですね。景王様,可愛い・・・もっとして差し上げ
ます・・」
 鈴の柔らかな唇が,硬く尖りきった乳首を何度も含む。
 チロチロと舌先が,唇の中で乳首を蹂躙していた。
「はぁ・・はぁっ・・駄目だ・・やめ・・」
 飽くことなく続く,乳首への舌責めに,陽子の吐息も荒いものに変わってきていた。
 全身は甘い痺れに包まれ,やるせない疼きが体に込み上げてくる。
「そろそろ・・・ここも触って欲しくなってきたんじゃない?」
 祥瓊の手が,するすると前に滑り降りてきて,夜着の裾を掻き分けて潜り込んできた。
「はぁううぅっ・・祥瓊っ・・待て・・っ・・駄目だ・・」
「ふふふ・・そんなに期待していたの? でも,まだよ。もっと十分に濡れてからね・・」
 慌てたような陽子の手が,祥瓊の手を制しようとするが,もはや力無い抵抗でしかない。
 妖しい声で耳元に囁き,祥瓊の手指は僅かに陽子の秘部を避け,際どくその両端を撫でさすった。
「くくぅ・・ぅっ・・駄目・・駄目だ・・そんなところを・・・いや・・やめてくれ」
 鈴の膝上で,閉じることができない陽子の両脚は,敏感な磯鶏部に指の愛撫を受けてぶるぶると
震える。
 正面からは,乳首から離れた鈴の舌先が,少しずつ這い降りて腹部に到達しようとしていた。
「焦らすなんて・・意地悪な祥瓊ですわね,景王様。景王様のお体は,こんなにも・・・ほら・・
気持ちよさそうにくねっているというのに・・」
「あぁうう・・っ・・」
 へそ周辺を上下に,丹念に舐め回しながら,鈴の指先は陽子の体中を撫で回す。
 敏感になってしまった素肌への愛撫に,陽子は祥瓊に背を預けながら,ふるふると切なく睫毛を
震わせた。

 股間ギリギリの脚の付け根に指を這わせながら,祥瓊は陽子の耳に舌をねじ込む。
「くうぅっ・・・ん・くく・・っ・・」
 陽子の体が,堪らずビクビクと痙攣した。
 熱く濡れた舌が,耳の中に侵入してくると,それだけで全身が快楽の波に浸かってしまいそうな
気がしてくる。
 加えて,鈴がへそを舐めながら体中をさわさわと愛撫し,股間は際どく指の責めを受けている。
「はぁ・・はあぁ・・っ・・こんなこと・・んんぅ・・っ・・いやだ・・・・」
 胸に込み上げる,もどかしくも切ない官能は,陽子が初めて知る感覚だった。
「どう? ね,気持ちいいでしょう? ふふ・・正直におっしゃい」
「そんなわけ・・・気持ちよくなんか・・・」
 陽子の強がりに,祥瓊は妖艶に笑う。
「ふふ・・・嘘」
 唇を噛んで声を押し殺し,何とか耐えようとする陽子の股間に,祥瓊は指先を進めた。

「はぁうぅぅ・・っ! んくっ! ううぅぅんんっ!」
 ビクンと大きく体を反応させた陽子に,祥瓊は思い知らせるかのように秘裂をえぐる。
 その衝撃の大きさに,陽子は大きく目を見開き,耐えきれない声を上げた。
 神経を直接触られたかのような,ビリビリッとした雷に似た痺れが,背筋を駆け巡る。
・・な,何だ,これはっ!? 凄く・・っ・・
 そのような処を触られるという,たとえようもない恥ずかしい行為が,こんなにも敏感な感覚を
呼び覚ます処であったことに,陽子は驚愕の思いだった。
 祥瓊の指先が,陽子の入り口を探り出す。
「いやっ! いやだっ! そんなところ,触らないでくれっ」
「ほらほら・・・ふふふ,景王様,暴れてはいけませんわよ。私の指にお任せくださいな。気持ち
よくして差し上げますから・・」
 秘部を触られて,羞恥のあまり取り乱す陽子の姿は,祥瓊にとって非常に可愛らしいもののよう
に思える。
「陽子・・・可愛いわ・・叫びなさい・・泣きなさい・・・もっと苛めてあげるわ・・」
 叫び,嫌がるように左右によじる体を押さえつけ,柔らかな花びらを掻き分けて指を進めながら,
祥瓊はこの上ない官能を掻き立てられていた。
 祥瓊のふっくらとした唇の両端が上がる。
「ほら,ごらんなさい・・・こんなに濡らして・・ふふふ・・イヤらしい子ね」
 陽子のソコは,祥瓊の予想に違わず,ぐっしょりに濡れていた。

 陽子の恥じらう乱れ姿は,鈴をも魅了していた。
「祥瓊,ずるいですわっ。あたしも景王様のソコ,可愛がって差し上げたかったのにっ」
 蠱惑的に拗ねたような鈴が,うっとりと陽子のソコを見つめた。
 陽子の秘部は,数本もの長い指に絡み付かれ,ぐちゃぐちゃに嬲られている。
 その淫らな様子に,鈴はますます恍惚の色を深くしていく。
「はぁ・・っ・・・素敵。景王様のココが,祥瓊の指に苛められているわ・・・指に浅く潜り込ま
れて・・グチュグチュにされて・・あぁ・・何てイヤらしいの・・」
「み,見るなっ・・ああっ・・んううっ・・そんなところ・・見ないで・・くれ・・」
 じっと凝視し,覗き込むような鈴に,陽子は羞恥に耐えきれず顔を逸らした。
「どうして? 陽子のココ,とっても綺麗よ。ほら,鈴がうっとりしているじゃない・・・ほら,
鈴・・・あなたも大好きな景王様のココ,触って上げなさいな」
「はいっ・・・景王様,うふふっ・・・あたしも参加させていただきますわ・・」
 祥瓊の言葉に,鈴が嬉しそうに陽子の股間に手を伸ばしてくる。
「やめ・・ろっ・・鈴っ・・あくっ・・ぁぁ・・うんっ・・これ以上はっ・・はあぁっ」
 必死に抗おうとする両手首を押さえつけて,鈴は敬愛する景王陽子の秘部に触れた。
 切ない声とともに,陽子の上体が,再び美しい曲線を描いて反り返る。
 クチュッという淫らな水音が響き,陽子の唇が声にならない息を吐いた。

 鈴の膝上で開かされた陽子の両脚の間で,そして後ろからも,張り出したヒップの下で潜り込ん
だ長くしなやかな手指が蠢く。
「うふふっ・・・景王様・・あたしの指で,気持ちよくして差し上げますね。祥瓊の指とどちらが
上手かしら? ふふふ・・ここ,どうですか?」
「うぅぅ・・っ・・だめ・・だ・・・それは・・っ・・あうぅっ・・そこは・・やめっ」
「どうして? ここを弄られると,陽子はどうにかなってしまうのかしら? それじゃあ,もっと
奥まで触って上げるから狂ってしまいなさい・・」
「や,やめっ・・ひああぁっ! はぁっ! いやあぁぁーっ」
 体内に侵入してきた指に,陽子は悲鳴を上げた。
 ぐねぐねと,生き物のように動きながら入ってくる長い指。
 指が,一関節侵入してくるごとに湧き上がる,ぞくぞくっとしたものにどうしようもなく声が漏
れる。
 祥瓊の熱い息が,耳の中に吹き込まれてきた。
「素敵よ・・・陽子。女の子の体って凄くイイでしょ? 今夜は,たっぷり教えて上げるから堪能
してね・・・ほら,もう根元まで埋まった。痛くなんてないでしょ?」
「く・・くくぅ・・っ・・・」
 これまで感じたこともない圧迫感。
 全身が,緊張と未知の感覚にぶるぶると戦慄く。
 しかし,声を失ったのも束の間だった。

「少し,内側の壁を触って上げましょうか? イイわよ・・・ほら,このヒダが特に・・」
 耳元に囁かれる声と同時だった。
 秘裂を割り,奥まで埋められた指がくねり動き,周囲の壁を掻き回す。
 それだけではなかった。
「景王様・・・ほら,ここが女の子の最高に気持ちいいところですのよ。あたしの指で,たっぷり
と味わってください」
 正面からは,ヌルつく鈴の指が,花びらに隠れた小さな突起を柔らかく押し潰してくる。
 指の腹が,小さく円を描くように,その突起の先端をなぞりながら何度も押し転がす。
「ひぃ・・ぃぃっ・・・」
 強烈すぎる刺激に,陽子は切なく苦しげな息を喘ぐように吐き,唇を何度も開け閉めした。
 腰が痺れる。
 声を出せば楽かもしれないのに,声が出ない。
 全身が,これから始まることに耐えようと身構えているかのようだった。
・・な,何かっ・・・何かが・・・くるっ・・・
 言葉にできない激しいものが,体の芯から押し寄せてくるのを陽子は感じた。
 頭の中に靄がかかってくる。
 全身が硬直してくる。
「ふふふ・・・イクのね。初めてなのに,もうイクなんて,何てイヤらしい子・・・ほら,存分に
イカせてあげるわよ」
 声が終わると同時に,『それ』は陽子を支配した。
「はあっ! あぁっ! 駄目っ! いやっ・・いやああぁぁぁぁぁっ!」
 陽子は絶叫していた。
 噴き出した汗が,陽子の体に光る。
 押さえつけられた腰をガクガクと痙攣させながら,陽子は右に左に身も蓋もなく乱れた。
 やがて,全身の硬直を解いた陽子は,ガックリとその身を二人に預けた。

「ん・・うぅ・・んん・・あ・・んっ・・」
 目を覚ました陽子は,二人に前後から挟まれたまま,未だに秘部を責められ続けていた。
 大きく開かれた脚の中心で,ビリビリと痺れる突起を,丸く柔らかく触り続けている指。
 ヌルヌルというよりはグチャグチャになってしまった秘裂に,何度も出し入れされる指。
 乳首は咥えられ,チロチロとした舌が嬲っている。
 耳や首筋に光る汗を,ペロペロと舐め取られながら,陽子は無意識に喘いでいた。
「やっと気がついたのね。イッた気分はどう? 最高だったでしょ?」
「あ・・あ・・も,もう・・許してくれ・・私は・・・もう・・」
 意識も朦朧と,力無く答える陽子の腰は,しかし,与えられる快楽を享受しようとするかのよう
に前後に動いていた。
「駄目ですよ,景王様。景王様の腰が,もっとイヤらしいことをして欲しそうに動いているのが分
からないんですか」
「は・・そんなっ・・・」
 言われて初めて気がつく。
 陽子は,自分の体の淫らさに愕然とした。
・・これが・・私なのか・・・淫らなことを求める体・・・何て浅ましい・・私・・・
 鈴が嬉しそうに,舌先で陽子の唇を舐め回してきた。
「さぁ,分かったら心おきなくたっぷりと楽しみましょうよ,景王様。こんな風に,景王様をお慰
めすることができて,あたしはとっても嬉しいんです」
 開かされた唇から唾液を舐め吸われ,舌を強く吸われる。
 それだけの行為で,陽子の頭の中はボーッとしてくる。
・・あぁ・・・何てイヤらしいことを・・私はされているのだろう・・・
 秘部が,乳首が,この上ないほど淫らに責め立てられているのを陽子は自覚した。

 溺れてしまいそうなほどの,悦楽と快感。
「あぁ・・んぅっ・・くぅん・・っ・・はぁ・・ぁんっ・・いや・・・駄目・・」
 休む暇もなく与えられる,前後からの二人の愛撫に,断続的に喘ぎ,体を狂おしくくねらせる。
・・あ・・あっ・・また・・・あぁ・・また,あれが・・・くるっ・・・
 陽子は,先ほどの感覚が再び近づいてくるのを感じていた。
 快楽の大きな渦が,すぐそこまで押し寄せてきている。
 呑み込まれまいと必死に抗おうとしながらも,決して逃れられないことを陽子は感じていた。
「嘘は駄目よ,陽子。本当は,気持ちいいんでしょ? もっとして欲しいんでしょ? 心でどう思っ
ていても,こうされると凄く気持ちいいんでしょ? ほら・・ココとか」
「ココもですわよね,景王様」
「くううぅ・・んっ!」
 楽しそうな二人は,淫魔さながらに指を,舌をくねらせてくる。
 秘部は,奥まで深々と長い指に貫かれ,何度もぐちゃぐちゃと犯されている。
 一撫でされるだけで強烈に甘く痺れる小さな芽は,ヌルヌルした指先で何度も転がされる。
「いやだ,やめろと言っておきながら,この濡れようは何かしら? ね,景王,陽子様」
「ち,違うっ・・そんなっ・・そんなこと・・言わないでくれ・・くっ! あぁっ! 指がっ・・
そこ・・そんなところをっ・・いや・・いやだっ・・」
 しかし,言葉とは裏腹に,体は歓喜の声を上げていた。
 切羽詰まった声が漏れる。
 ぞくぞくと震えるような官能は,絶え間なく陽子の体を襲う。
 最後の抵抗だった。

「またイクのね・・自分を誤魔化すのはやめなさい・・堪らなく感じているくせに・・ほら,これ
でも違うというの? 指を動かしてやるだけで・・こんなにイヤらしい声を上げているくせに・・
イカせて上げるわ・・ほら,イキなさい・・自分の体のイヤらしさを教えて上げるわ・・」
 秘部を弄ぶ手指が,激しさを増す。
 乳首が,指に摘まれ,強く吸い上げられる。
「ほら・・イキそうなんでしょ。気持ちいいんでしょ?」
 確信を持って囁かれる,言葉の責め。
・・その通りだ・・・私は・・浅ましい・・・
 陽子は唇を噛んだ。
・・も・・もう・・我慢できない・・・
 陽子は目を瞑った。
 一気に押し寄せてくる,快楽の波に身を任せる。
「あ・・あぁ・・・くる・・・また・・また・・・駄目・・駄目だっ・・あ,あぁっ! こ,こん
なの・・こんなのっ・・・うあああぁぁぁーーーっ」
 体の求めるままに腰を振り,陽子は,体を包み込む二度目の絶頂に溺れた。

 二人の責めは,果てがないかのように続く。
「はぁ・・はぁ・・・ぁぁ・・っ」
 寝台に横たえられた陽子は,息も絶え絶えに喘いでいた。
 肩・・腕・・背中・・太腿・・そして足先まで,鈴と祥瓊の舌が這い回っている。
「景王様のお体・・・とっても綺麗。はぁ・・っ・・本当にそそられてしまうわ・・・景王様・・
どうぞ,そのお体を隅々まであたしに舐めさせてくださいませ・・」
「はぁ,はぁ・・・私もよ。貴女の体を舐めていると,堪らなくなってくるわ・・夢みたい・・陽子
にこういうことをするのが,私の願望だったの・・もっと舐めさせて・・体中」
 二人の声には,夢うつつであるかのような恍惚の色が含まれていた。
 妖艶な目をして陽子の体を見つめ,うっとりと口づける。
 唇を,素肌の上でなめらかに滑らせてやるだけで,媚薬を吸い込んだ陽子の体は堪らなそうにピク
ピクと反応した。
 精も根も尽きてしまったかのようなその四肢は,ぐったりと長く伸びている。
「うぅ・・んくっ・・ぁぁっ・・」
 終わりなく与え続けられる快感に,ただひたすら甘く痺れる肢体は,もう陽子のいうことを聞い
てはくれなかった。
 吸われる乳首が,どうしようもなく感じた。
 太腿や背中を舐める舌が・・・肩や脚を撫で回す指が・・・・・心地よかった。
・・どうして・・どうしてこんなに・・・私は・・・どうしてしまったんだ・・・
 体が,再びミぶっていく。
 陽子は,目を瞑った。

 陽子の体を愛する二人の舌は,やがて,両脚の中心を目指して集まってくる。
 熱い蜜に濡れ光る,美しい陽子の秘裂。
 陽子のソコに熱い視線を注ぐ二人は,欲情の極限状態にまでミぶっていた。
「陽子・・・ココを舐められる快楽なんて知らないんでしょ・・私が教えて上げるわ・・」
 祥瓊は,吸い寄せられるように,愛しげに陽子の下半身に顔を埋めた。

「しょ,祥瓊っ! な,何をっ! んっ,あっ,ああぁぁーっ!」
 思いもかけない行為に,陽子は狼狽した。
 そのような処を・・・秘部を舐めるなど,そのような行為があることなど知らなかった。
 考えたこともない。
「そんなっ! い,いやだっ・・やめろっ」
 慌てて,両手で祥瓊を引き剥がそうと,股間に埋められた頭に手をやる。
 その手を押さえ込んだのは,鈴だった。
「どうしたんですか,景王様? 祥瓊の好きなように,舐められてくださいね。きっと,女の子の
最高の歓びが味わえますわ」
・・私は・・・どうなって・・しまうのか・・・・
 身動きできない股間の中心に,祥瓊の舌が触れるのを感じる。
「私の舌を味わわせて上げる・・・ココを舐められる快感は凄いわよ・・」
 細く尖らせた舌が,ねじ込まれた。
・・舌が・・ああっ・・中にっ・・・
 陽子は押さえ込まれた両手で,シーツを握り締めた。

「美味しいわよ・・・陽子のココ。もっと頂戴・・・」
 嬉しそうな祥瓊が,舌を長く伸ばしてヌメる秘裂をえぐってくる。
「ああぁっ・・・こんなのっ・・・い,いやだっ・・やめろっ・・・」
 陽子は,シーツを握り締めた両手を引きつらせた。
 鮮烈な刺激だった。
 内側の壁を掻き分けて入ってきた舌。
 陽子の脳裏に,祥瓊の唾液に濡れた舌が,自分の熱い内部でくねり動く様子がはっきりと浮かぶ。
・・こんな処を舐められるなんて・・・こんなっ・・こんなイヤらしいことがっ・・・
 媚薬と延々と続く愛撫によって,これ以上はないほどの性感を引き出されたミぶる体。
 陽子は,温かく軟らかな舌の侵入に,腰をぶるぶると戦慄かせて身悶えた。

「あぁ・・本当に美味しい・・陽子のココ,最高よ・・凄く・・夢中になってしまいそう」
 抱え上げられた股間に沈んだ舌先が,秘裂をえぐりながら上下に往復する。
・・だ・・だめだ・・感じてしまう・・・・
 声を上げて悶えたい衝動を歯を食いしばって押し殺し,陽子は懸命に耐えようとした。
「ああ・・んっ・・頼む・・もう・・もうやめてくれ・・こんなのっ・・いやだっ・・」
 顔を赤らめて必死に抵抗しようとする両手を押さえつけ,鈴は楽しそうに笑った。
「ふふふ・・景王様,可愛い・・・そんなに,ココを舐められるのが恥ずかしいんですか? でも,
恥ずかしがることはありませんわ」
「す,鈴・・・」
「同じ年頃の女の子どうしですもの。どこをどうすれば気持ちいいかなんて,ちゃんと存じ上げて
いますのよ・・・簡単なことです・・景王様だって,同じ女の子なんですもの。ほら,こうされる
と気持ちいいでしょ」
 言うなり,鈴の唇が尖ったままの乳首に吸い付いてきた。

「くうぅぅ・・・っ・・」
 陽子は,苦悶の表情で喘いだ。
・・そんなっ・・胸までそんなことをされたらっ・・・
 乳首をペロペロと舐める鈴の舌は,絶妙に陽子を刺激する。
「彼処と乳首と・・・敏感に感じるところを,両方一度に舐められて責められてしまう気分は如何
ですか・・・凄い刺激でしょ?」
 鈴の言う通りだった。
「あ・・あ・・・いや・・駄目・・駄目・・」
 淫らな気分が,どうしようもなく湧き上がってくるのが止められない。
 精一杯耐えて,押し殺しているというのに。
・・た,堪らないっ・・・
 乳首から伝わる淫らな信号が腰に流れ,恥ずかしくてならないはずの祥瓊の舌責めを,狂おしく
もっともっとと求めようとしてしまう。
「うふふっ・・・陽子,凄く気持ちよさそうね。私の舌がそんなにイイの? それとも,乳首と同時
に舐められるのが好きなのかしら?」
「そ,そんなことっ・・・ち,違う」
「うふふっ・・・言葉だけの抵抗とはいえ,頑張るわね。でも,それでこそ景王,陽子よ・・・普通
なら,とっくに堕ちているもの。あぁ・・私の大好きな陽子・・ますます愛して上げたくなるわ」
「うっ・・くくぅっ・・くああぁぁ・・っ」
 ビクンビクンと跳ね上がる細い腰をしっかりと抱えて,祥瓊は陽子の奥まで啜り上げる。
 秘裂の奥に忍ばせた舌をぐねぐねと動かすと,際限なく溢れ出した温かな蜜が,祥瓊の舌に絡み
つき,豊かな水音を響かせた。

 陽子の腰が,祥瓊の舌の求めに応じて悩ましくくねっている。
・・腰が・・・痺れる・・・
 自分を見失ってしまいそうな感覚。
 いや,とっくに理性など・・自分というものすら見失ってしまっているのかもしれない。
 陽子のそんな表情に,頬を紅く染めた鈴がほうっと溜息をついた。
「あぁ・・景王様・・感じていらっしゃるのですね。祥瓊に舐められて,腰がほら・・こんなに堪
らなそうにくねって・・あぁ・・そんな景王様を見ていると,あたしも堪らなくなってきます」
 未だに,陽子の秘部から離れない祥瓊を恨めしそうに見やる。
「ねぇ,祥瓊・・・そろそろ,あたしにも代わってくれない? ずるいわ,祥瓊ばっかり景王様の
ソコを独り占めして」
 嫉妬の目を向けられた祥瓊は笑った。
「ふふっ・・・駄目よ。だって,陽子のココ・・とても感度が良くって美味しくて・・・私,夢中
なんですもの」
「そんなぁ・・・あたし,もう我慢できない」
 欲情に濡れた目で哀願する鈴に,祥瓊はふふっと悪戯っぽく笑い,陽子の片膝を抱え上げて広げ
て見せつける。
 そこには,祥瓊の舌に蹂躙されて,淫らに濡れ光る陽子の秘部が,余すところ無く晒されていた。
 鈴にとって,魅力的な,景王陽子の秘部。
 視線を釘付けにした鈴に,祥瓊は艶やかに誘いかけた。
「二人で一緒にならいいわ。陽子のココ,一緒に可愛がって上げましょ?」
 際限を知らない悦楽の責め。
 陽子に為す術はなかった。

 甘美と言うには,あまりにも強烈な快感が体の中で渦巻いている。
「はっ・・あんっ!・・くっ!・・ひ・・あっ・・く・・くうぅんっ!」
 脳天まで突き抜けるかの思うほどの痺れに,陽子は裸身を左右によじって荒れ狂った。
「景王様・・・ずっと憧れていました・・・あたしも景王様を気持ちよくするお手伝いがしたいん
です・・全霊を込めて,景王様をお慰めしますわ・・」
「鈴っ・・やめろっ・・やめてくれっ・・あっ・・駄目っ・・くあっ・・これ以上されるとっ・・」
「これ以上されると,なあに? おかしくなっちゃう? いいのよ,陽子。おかしくして上げるわ」
「やめろっ,うああぁぁっ!」
 暴れて跳ね上がる肢体を強引に押さえつけ,鈴は祥瓊と共に,左右に大きく広げた股間にむしゃ
ぶりついた。
 蜜が溢れる花びらを左右に押し広げ,そこら中をベロベロと舐め啜る。
 尖らせた舌先で陽子の入り口を探り,強引にねじ込んでいく。
 すぼめた唇を陽子の秘裂につけ,チュウッ,チュウッと強く吸い付く。
「ひあぁぁぅっ! んっ,あっ,だめっ,いやああぁぁーっ! ひいぃぃぃっ!」
 二本の舌に,同時に秘部を這い回られる快感は,陽子からすべての力を奪い去った。
 抵抗する力・・しようとする意志・・耐える精神力・・そして,思考力でさえも。
・・な,何もっ・・凄すぎて,何も考えられないっ・・・
 感情のタガが外れたかのように,陽子はヨガり狂った。
 声を押し殺す余裕などもう無い。
 大きな声で喘ぎ,悶え,掴んだシーツを掻きむしる。

 鈴と祥瓊は,熱に浮かされたかのように,夢中で陽子の秘部を責め立てる。
 二人には,もう陽子の絶頂が近いことを感じていた。
・・そろそろね・・それじゃあ・・
 二人は示し合わせたように,舌先で花びらを掻き分けた。
 最も敏感な,小さな真珠のような珠。
「イキたいのね,陽子? イカせて上げるわ・・・女の絶頂を味わわせて上げる・・」
 その瞬間,陽子の体がビクンと大きく跳ね上がった。
 陽子の瞳が,驚いたように大きく見開かれる。
 開いた唇が,声もなくわなわなと震えた。
 陽子の股間を掻き分けて,最も敏感なその部分に,二本の舌が先を争うように絡み付いていた。
 敏感な小さな珠を唇で挟まれ,代わる代わる吸い立てられる。
「ひぃぃ・・っ・・は・はあぁぁ・・っ・・」
 かすれる息とともに,小さく声が漏れた。
 二人の舌先に突き転がされるその点を中心にして,何度も味わったあの雷のような強烈な痺れが
体全体に広がる。
・・ま,また・・・くる・・これが・・二人が言う・・『イク』という『絶頂』なのか・・
「さあ,これがトドメよ・・」
 あの珠が,軟らかな舌に押し潰されるのが分かる。
 舌先が,珠を根元から掘り起こすように何度も突き転がしてくる。
・・イ・・・イク・・・・
 陽子は,目を瞑った。
 今日,今までで最高の悦楽が押し寄せてきたのを陽子は感じた。
「鈴っ,祥瓊っ・・・もう・・もうっ・・私はっ・・ああああぁぁぁぁーーーっ!」
 ガクガクと全身を震わせ,陽子は高みに昇り詰めた。



 意識を失っていく刹那,陽子は祥瓊の声を聞いた。
「まったく,みんな呆れちゃうわよね。陽子は確かに国王だけれど,花も実もある女の子なのよ」
「しかし・・それは・・私が・・」
「うぅん,自分で選んだって言いたいんでしょうけれど違うわ。何度も言うけれどね・・・貴女は
『女の子』なの。いろんなものが枯れ果てたジジイとは違うのよ・・・体がね」
「体が・・・違う」
「そう。あの延王だって,時々街に出て遊び歩いているくらいなんだから。もちろん,名前は伏せ
ているみたいだけどね・・・・自分を知るって大切だわ・・・ふふふ,だから・・ね」
 祥瓊は笑った。
「明日も,抱いて上げるわ」
「そんな・・・」
「でも,まだ,『男』は教えて上げるわけにはいかないわね・・・物事には順序があるの」
「順序・・・」
「陽子は,まず,心と体を自由に解放することから覚えなければね・・・」
「それは・・」
 意識が切れ切れになり始める。
「いいのよ・・」
 祥瓊は愛しげに,陽子を寝台に横たえた。
「そのために,私たちが来たんだから・・・だから・・」
 最後は何と言っているのか分からなかった。
 陽子は深みに落ちていった。



 翌日。
 なかなか正寝から顔を出さない陽子に,諸官たちは気を揉んでいた。
「主上は,どうしたのか。祥瓊も鈴も自信たっぷりで笑っているだけだし・・・」
 朝議もとうに終わった諸官たちだったが,各々の持ち場に着く決心も付かず,気もそぞろに,ただ
うろうろとしている。
 陽子が,そんな諸官たちの前に姿を現したのは,太陽も高く上った頃だった。

「しゅ,主上っ!」
 真っ先に陽子の姿を見つけた景麒が,側に駆け寄る。
 昨日まで見えていた,疲労のような鬱屈とした色は微塵も見えなかった。
 それどころか,何だか晴れやかなものさえ感じる。
・・よかった・・鈴と祥瓊に任せて上手くいったようだ・・・
 景麒は,ほっと安心する。
 しかし,それなのに陽子は,今にも消え入りそうな表情で,辛うじて何とか立っているという風体
だった。
「す,すまない・・・なかなか顔を出す決心が付かなくて・・すっかり遅くなってしまった・・」
「主上・・?」
「いや・・いいんだ。こちらの話だから」
 不思議そうな顔の景麒から,顔を赤らめて目を逸らす。
「顔が少し赤いようですが・・・主上,もしかしてご気分がすぐれないのですか? 必要でしたら,
医者を呼びますが」
 陽子は慌てて手を振った。
「いや,違う! いいんだ,気分は・・・とても・・気分は・・いい。ただ・・・」
「ただ・・・何です?」
「二,三日・・・いや,今日だけでもいい。政務を休んでも・・いいだろうか。しばらく,慶の風景
を見て歩いてきたいような気分になったんだが・・」
 景麒の目が,大きく見開かれた。
「もちろんです,主上! 二,三日ではなく,七日でも十日でもっ」
 突然,周囲で湧き起こった,おぉうという地響きのような声に驚いて,陽子は周囲を見渡した。
 慶国の諸官たちが快哉を叫んでいる。
 陽子は,訳も分からず,にこやかな笑顔で手を振った。


「では,行ってくる。後は頼む」
 騎獣に跨る陽子に,景麒をはじめとした諸官たちが笑顔で手を振る。
 誰もが,敬愛する景王が,華さえ感じる晴れ晴れとした顔をしているのが嬉しかった。
「おぅ! どーんと,任せといてくれ。ただ,俺に任された分は,グチャグチャになっちまうかも
しれんがな」
「大丈夫です。虎嘯がヘマをすれば,すぐに処罰しておきますので。私もついていますから,主上
にはご心配なく」
「ぐぇ」
 浩瀚の静かな言葉と,虎嘯の苦虫を噛み潰したような顔に苦笑しながら,陽子は金波宮をゆっくり
と後にした。


「・・で? 陽子はどこに行ったの?」
「は・・・主上は−」
 景麒や諸官の,絶大な信頼を勝ち得た,鈴と祥瓊は難なく陽子の宿泊地を聞き出し,後を追う。
「確か・・・七日でも,十日でもいいんだったわね」
「は・・・それが何か?」
「いや,いいの。それだけあれば,十分だと思うから。安心していてね」
「あ・・・それから『使令』には,昨夜と同じく,夜には陽子から離れて部屋の外で待機するよう
に言っておいてね」
「は・・・承りました。主上を・・よろしくお願いします」
 謎めいた笑顔を残し,二人は騎獣を飛び立たせた。

 その後のことは,また別の話である。
 ただ,陽子がひどく景麒を恨んだのは当然のことだった。




 そして,現在。
 徐々に立ち直っていく慶に充実感を感じる陽子に,以前の鬱屈したものはない。
 輝く笑顔。
 溌剌とした立ち居振る舞い。
 しばらくの間,政務に追われる毎日を送ったとしても,その輝きはいささかも失われることはな
かった。
 慶国国王の人格として,非常にバランスのとれた女王へと変貌していく様を見るのは,主上と仰
ぐ諸官にとっては無上の喜びであった。

 しかし・・・
 陽子は,太陽が昇り,落ちていくにつれ,気分が変化していくのを止められない。
「・・今日も・・一日が終わるのか・・・」
 周囲が紫色に変わり始めると,陽子は憂鬱そうに大きな溜息をつく。
 最近,忙しい毎日を送ったり,大変な事柄があったりした日には,景麒は陽子の疲れを取ろうと
気を回したつもりで,鈴と祥瓊を招いているのだった。

・・今夜も・・鈴と祥瓊が待ち構えているはず・・・
 本当に,本心から不快で嫌であれば,明確に拒絶することができる。
 しかし,あの夜から始まった十日間で,陽子は自分というものを思い知っている。
・・拒めない・・・
 今夜はどんなことをされるのか,どんな悦楽が待っているのか,想像するだけで頬は赤く染まり,
ドキドキと心臓が高鳴るのを止められない。
 陽子自身から求めることはなくとも,あの二人に求められると,どうしても心が騒ぎ,体が疼い
てしまうのだった。

 陽子の表情の翳りを,一日の疲れと見て取った景麒が,優しげな笑顔を浮かべる。
「主上におかれましては,さぞお疲れのことでございましょう。鈴と祥瓊が,寝所を整えてござい
ます。お早く,お休みになられませ」
 陽子は恨めしげに景麒を見つめた。
「余計なことを・・・」

 金波宮に,夜が更けた。
 いつ終わるとも知れぬ,長い夜が。
 景王,陽子の憂鬱は終わりそうにない。


         終わり 動画 アダルト動画 ライブチャット